フレッシュマンウィーク(上智大学の部活紹介・勧誘をする期間)の時に「少林寺って、中国の武術ですよね?」と頻繁に尋ねられることがありますが、その少林寺と「少林寺拳法」は別ものです。
では一体、「少林寺拳法」とはどのようなものなのでしょうか。
戦後間もない1947年、開祖・宗道臣によって少林寺拳法は創始されました。開祖は戦時中、17歳で満州に渡り、中国武道各派の達人から秘技を修得しました。
そして1945年、終戦を迎えることになり帰国した開祖でしたが、そこで見たのは日本の混乱でした。特に未来を嘱望されている青少年の混乱は極めて喫緊の問題でした。
そこで開祖は中国で修得した拳技に創意工夫を加えました。誰もが楽しめるように整理・再編をし、香川県の多度津町の自宅で道場を開き、「人づくりの行」を説いていきました。それが少林寺拳法の始まりです。
歳月は流れ、現在では登録会員150万人、世界32カ国に支部を置くまでに発展しています。
修練の方法は「基本」、「法形」、「運用法」、「演武」があります。
・基本
体の動かし方を学ぶ過程です。
少林寺拳法においては、突き(パンチ)や蹴り、構えや体さばきです。この基本がすべての技の基礎となります。
・法形
基本を正しく修得した上で、護身の拳技を学ぶ過程です。相手の動きに反応し、具体的な技のくり出し方を学ぶ修練です。
少林寺拳法では「剛法」(殴ったり蹴ったり)と「柔法」(関節を決めたり、体のバランスを利用して相手を倒す技)があります。また、双方を合わせた技もあり、多彩です。
・運用法
学んだ法形をどの程度使いこなせるか実践してみる過程です。なによりも心配なのが怪我ですが、独自に開発された防具を着用し行なうので、安全です。
・演武
修得した法形を守者(技をくり出す方)と攻者(攻撃する方)に分かれ、互いに技を掛け合うという過程で、お互いの創意工夫により技術の上達を促す修行です。
大会では、主にこの演武を披露し合います。
ここまでの内容をお読みになり「なんだか堅苦しいなあ」とお思いの方も多いかもしれません。ですが、この章のタイトルにもあるように少林寺拳法は護身術としても有効です。つまりこんな感じです。
「少林寺拳法の修行って実は非常に厳しいのでは…」と思われる方がいるかもしれません。しかし決してそのようなことはありません。
少林寺拳法の修行のあり方は、「体力に応じて技を楽しみ、術を楽しみながら修行すること」ですから、体力差を考えない苦行は少林寺拳法において奨励されていません。
規律正しく生活し、皆で楽しく修行を行なう。この修行のあり方によって、少林寺拳法は老若男女問わず、誰にでもできる開かれた武道なのです。
少林寺拳法は武階(主に拳技の修養段階を表す、つまり級や段のこと)と法階(初段以上に与えられる技と心の両方を総合した修養段階)を設けています。
初心者はまず「見習い」となり、基本と法形を中心に修練をしていきます。2ヶ月かに一度の昇級審査で、六級、五級、四級、三級、二級、一級と昇格し、昇段試験において初段となります。
つまり、初心者の方でも約1年半で黒帯が取得できるのです。在学中に三段を取得することも可能です。
少林寺拳法における階級制度とは、他人と比較するものではなく、自分自身の修行の指標にすぎないのです。自身の指標が一定の
基準に達しているかどうか、それまでの道のり、努力を評価してもらう機会が昇級・段審査なのであり、修練の証が武階や法階によって表されているのです。